interview 06

風夏さんの話が聞いてみたかったんだ【前編】

志賀風夏
cafe&gallery 秋風舎で美味しいご飯をつくる人

風夏さんの話が聞いてみたい。そう、ずっと思っていた。

風夏さんと初めてお会いしたのは、とある移住ガイドブックでのインタビュー。当時、風夏さんは故郷の川内村でcafe&gallery 秋風舎を開店したばかりで、とにかくたくさん取材を受けているのを知っていたから、こいつダメダメだなって思われないかなと緊張したのを覚えている。

実際インタビューしてみると、所々で毒を織り交ぜながら(書けなかったけど)こちらの質問に真摯に丁寧に答えてくださった。その時に心に残った言葉が「被災地だからとか、復興のためにとかじゃなくて、自分の地元だから戻ってきた」というもの。

当時、地元 富岡町に戻ってきて間もなかった私の心に「そう!そうなの!!」と共感の嵐が吹き抜けた。

いつか仕事としてではなく、風夏さんとただただ話してみたい。少しだけ心を近づけてみたい。そう思いながら、秋風舎にお客として通っては機会をうかがうこと約3年。

ついに今回、その想いが叶った。

“種からする声”を拾い上げる

―以前、移住関係のインタビューで風夏さんにお話を聞いてから、もう数年経っててビックリ! 改めてwebで「志賀風夏」で検索してみたら、ものすごい数の記事がヒットしました。

風夏さん:最近「喋り慣れてるね」って言われるの、イヤなんですよ~笑。

―いや~、あれだけ取材受けてたら喋り慣れますよ笑。移住に関するものや起業の話が多い印象でしたけど、今回は「志賀風夏」というひとりの女性のお話を聞たくて。

というのも、このwebマガジン『knot』を立ち上げた理由が、「この地域で普通に暮らしている人たちの中にも、面白い人はいっぱいいるはず。メディア露出が多い人でも、震災や復興、移住という文脈じゃない、その人の別の側面を伝えたい」と思ったからなんです。

風夏さん:私、ラジオを立ち上げた理由、まったく同じです! まだメディアに取り上げられていない人を見つけたいよね。でも、そういう人って喋り慣れてないよねって、一緒にラジオを運営している大熊町の『読書屋 息つぎ』のユウくんに話したら、「それって“種”ですね」って言ってくれて、ラジオのタイトルが『種からする声』になりました。まだ発芽していない人たちの声を拾い上げる番組にしたくて、ユウくんが名付けてくれたんです。

―良いタイトル~!

風夏さん:そうんなんです、素敵なタイトルなんです! 取材を受けてる人ってだいたい同じメンツだし、同じようなことを何回も話してもうみんな疲れてきてるなって感じてます。だからこそ、地元の人間が地元の人の話を深掘りして聞いて伝えることが必要になってきてるんじゃないかって思うんです。

―同じ思いを抱えている人がいて嬉しいです! 以前移住関連のインタビューをさせていただいたとき、風夏さんの「復興のために戻ってきたんじゃなくて、自分の地元だから戻ってきた」という言葉がすごく印象的で。私も同じ~~~!!!ってすごく共感しました。その言葉がずっと頭に残っていて、いつか個人的にお話聞いてみたいなって思ってたんです。「単に地元に戻ってきただけなんだけど」ってことを、なかなか言いづらかった時だったので。

風夏さん:そうだったんですね。真耶さんの地元の富岡町や、お隣の大熊町は、川内村よりも復興のために移住されている人が多い地域じゃないですか。だからなおさら言いづらかったのかもしれないですね。

―そうですね。私も何回か取材受けてるんですけど、やっぱり「古里の復興のために戻ってきた」って誘導されがちだったんですよね。メディア側はそういう見せ方をしたいっていうのはわかるんだけど……。

風夏さん:川内村は復興のために!って人が少ないからなぁ。移住してきた人たちも、ここで何かを成し遂げたいってわけじゃなくて、好きなことをやるために場所を探していたらたどり着いたのがここだったとか、この村での暮らしが気に入ったからって理由の人が多いですね。

川内村は、割とマイウェイというか、自分のしたいことを仕事にしている人が多いなという印象があります。あとは、どこにも所属せず、自分で何かやって暮らしてる人。

―昔から勝手に川内村って近寄りがたいと感じてて。隣町で暮らしてるけど“よそ者”って思われそうでなんか入り込めなかったというか。

風夏さん:そうなんですか? 一回入っちゃうと、来るもの拒まずで割とほったらかしですよ。ただ、村外から来た人たちが思い描くような“村人との交流”みたいなのはもちづらいかも。待ってるんじゃなくて、自分からガンガン開拓していかないといけないから。

ここで生まれ育ってるけど、両親が移住者だったから、私はまだ村民じゃないというような意識があって。コンプレックスでもあるんですけどね。多分、私の子どものそのまた子どもの代になって、ようやく完全な村人と言えるようになるんじゃないかなと思ってます。

積ん読が、多分趣味

―川内村といえば風夏さん!くらいに思ってましたが、風夏さんの中にそんなコンプレックスがあったとは。普段のお仕事以外の時間は、村でどんな暮らしをしているんですか?

風夏さん:何もしてないです!

―風夏さんの私生活が見えないんですよ~。

風夏さん:本当に何もしてないんですよね。私、基本、働きたくないんですよ。

―同じ同じ!  私も極力働きたくないです笑。

風夏さん:本当に働きたくなくて。将来働かずに済ませるために、いま頑張って働いているだけ。なので休みの日は、なるべく何もせずに家で過ごすのがものすごく幸せ!

―家でひたすらゴロゴロするみたいな?

風夏さん:そうですね。あとは私、積ん読がめちゃくちゃ多くてそれが多分趣味なんどすけど、積ん読を消費しないと新たに積めないじゃないですか。だから「消費するか……」って、頑張って本を読んでる感じ。

―めっちゃわかる!  私は本を読むというより、本を買うのが趣味です笑。

風夏さん:わかります! 帯とか解説とかパラパラって読んで、こんな本があるのねって見てるときが一番テンションが上がって、読み進めていくとだんだん「うーん……」ってなるんですよ。その本に出会った瞬間が一番というか。

―そうそう。私ももう何十冊積ん読してるの?ってくらいあります。

風夏さん:私も数えたくないかも笑。

―どんどん増えていくし、これ私が生きてる間に読み切らないんじゃないかって。

風夏さん:でも、本棚が充実していくのが好きなんですよね。

―そう! 本が並んでいる様を見るのが好き。

風夏さん:勉強したい、知りたいという気持ちを本を買うことによって発散させちゃってるから、その後は読まないっていう笑。

―そのときの自分の精神状態によって、読める本って変わりません?

風夏さん:変わりますね。もう今日は疲れてるから、食エッセイしか読めない、みたいな。居間で猫たちを膝に乗せながら読んでます。仕事をしていると、もう食エッセイ一本になっちゃうかも。

独学で覚えた料理

―食といえば、風夏さんはどうやってお料理を覚えたんですか?

風夏さん:困ったことに独学なんですよ。

―独学でこれだけ美味しい料理が作れるってすごいですよね!  何かの記事で風夏さんが「食いしん坊なので、料理もします」みたいなことをおっしゃってて。私もすごく食いしん坊なんですよ。美味しいもの大好きで。でも自分で作るのはイヤ!  料理をしているとイライラしてくるんですよ。ひたすら野菜を切ってるときとか、この時間がもったいないって思っちゃうんですけど、逆に夫は料理がストレス発散になるらしくて。風夏さんは?

風夏さん:私も仕事以外で日々のご飯を作っているときはイライラしますねぇ。「今日はこれを食べるぞ!」とパッと思い浮ぶときはいいんですけど、「今日はどうしよう。冷蔵庫にこれとこれがあるから使わなきゃいけない」みたいなときはすごくイヤ。洗い物もめっちゃ嫌い笑。調理で終われればルンルンなんですけど、最後は絶対洗い物で終わるじゃないですか。だから上がったテンションがそこで下がって終わる。

―独学で料理を覚えたということは、レシピ本などを読んで?

風夏さん:そうですね、レシピを少しずつ自分流にアレンジしていってとか。あとは、この地域だと、どうしても食材に限りがあるので、その時々で作るものを変える必要があるんですね。地域で採れた食材をメインにしているので、仕入れが安定しなくて決まったメニューを作れないんです。

―今日入ってきた食材で何を作ろうかって考えながら?

風夏さん:そんな感じが多いですね。今日はビーツがいっぱいあるから、副菜どうしようかな?とかね。

―先ほどランチでビーツいただきましたけど、すごく美味しかったです! ビーツを作っている方が川内村にいらっしゃるんですね。

風夏さん:そうなんです。川内村はほとんどが兼業農家さんなんですけど、その奥様たちが集まって「野菜勉強会」というグループを結成してるんです。西洋野菜とか、作り方がよくわからない野菜を共同の畑でみんなで栽培しています。ビーツとかロマネスコとか、フェンネルとか。そういう変わった野菜を作ってるんですよ。

―結構クセのある野菜たちを、あそこまで食べやすく料理できるのはすごいです!

風夏さん:食いしん坊ゆえですね笑。


後編に続く。お楽しみに。

インタビュー・文/遠藤真耶
写真/倉田若菜

志賀 風夏(しが ふうか)

1994年陶芸家の両親の元川内村に生まれる
相馬高校一年生の時に震災を経験し、その後福島大学で美術を学ぶ
2017年川内村に帰村し、かわうち草野心平記念館の管理人を経験した後2023年から秋風舎をオープンさせる

 

写真:倉田若菜 Instagram @nanaaa_photo