interview 04

東北の面白いヒトやコトをPRするために(前編)

草野菜央
フリーランスPRプランナー

PR業を生業としながらも、フリーマガジン『SPOT(s)』を2024年3月に創刊。さらにはライフスタイルショップ『Magic Products』をオープンするなど、いわき市で精力的に活動している草野菜央さん。私が菜央さんに初めてお会いしたのは、今から2年前。とある媒体のインタビューだった。しかも、私がインタビューをするのではなく、受ける方。菜央さんがライターとして私にインタビューしてくれたのだ。初めてお会いし、顔を見た瞬間から「あ、この人とはきっとこれからも会うことになるわ」と感じた。予感は的中し、今でもお付き合いが続いている。菜央さんのパートナーでもあるカメラマンの鈴木宇宙さん含め3人でランチをした昨年末、『SPOT(s)』創刊にあたって、ロングインタビューと職業インタビューの2本を依頼された。webではなく、あえて“紙”媒体で勝負をかけた菜央さんのものづくりや発信に対する思いに触れ、この人はどんな人生を送ってきたのだろう?と興味が湧き、インタビューをお願いした。

引っ込み思案だけど我は強かった子ども時代

―大人になった今振り返ると、自分はどんな子どもだったと思います?

菜央さん:中身は今とあんまり変わってない気がします。結構引っ込み思案だったんですよね。

―うそ!?笑

菜央さん:今でも人前に出るのはめっちゃ嫌い。

―うそ!?笑(2回目)

菜央さん:前に出るより、裏方がいいなって思うタイプ。前には出たくないんだけど、自分の“好き”を押し通す我の強さは昔からあるかも。あとは、男の子によく間違われてましたね。

―活発だったってこと?

菜央さん:そうですね。動き回るっていうのもあって、スカートが苦手で。足を出すのもすごく嫌。女の子っぽいものも苦手でしたね。そこにずっと違和感があったのは覚えています。兄の影響か、男の子が好きなポケモンとか遊戯王のカード集めとかが好きでした。ファッションや音楽も子どもの頃から好きでしたね。

―当時、好きなファッション雑誌はありました?

菜央さん:小4で雑誌デビューしたんです。一番最初に買ったのは「nicola」。新垣結衣さんの時代の。「エブリア」の中にある本屋まで買いに行ったのをいまだに覚えています。幼馴染の女の子がうちに泊まりに来たときに一緒にテレビを見てたら「nicola」が出てきて。「nicolaってなんだろう? 今から買いに行こう!」って、ふたりで走ってエブリア行って。

―「nicola」を初めて読んだときに感じたことは覚えていますか?

菜央さん:キラキラして見えたのは覚えてます。でも、雑誌の中身より幼馴染と走って買いに行ったことの方を鮮明に覚えてる笑。

―「nicola」のどんなところに惹かれたんですか?

菜央さん:子どもの頃から服は好きだったんですけど、まだ“ファッション”という言葉を知らなかったんです。「nicola」でファッション誌というものを初めて知って、こんなキラキラした世界があるんだって。

―漠然としたファッションへの憧れですか?それとも雑誌を作ることへの興味?

菜央さん:雑誌に出てる人に憧れを感じました。読者モデルとか。中学生の時は「mini」を読んでて、カジュアル系の服をよく着てましたね。

―子どもの頃、周りからはどう思われてたんでしょう?「菜央ちゃんってこういう子だよね」みたいな。

菜央さん:我が強い子。私、“これだ!”と思ったら我慢できないんですよ。服もこれが着たいと思ったら、もう絶対それじゃなきゃ嫌。

周りに流されず「好き・楽しい」と思うことを選ぶ

―一回好きになったものって長く続きます? それともまた他に好きなものを見つけちゃう?

菜央さん:ものによるかも。根本はずっと一緒だけど、その周りにあるものはコロコロ変わることもあるかな。

―菜央さんの根本ってなんでしょう?

菜央さん:え……。根本……。なんだろう?

―私の話になっちゃうけど、自分の根本ってなんだろう?っていうのを探そうというか、思い出そうとしてて。自分の地元に戻ってきて「子どもの頃、私どうしてたっけ? 何が好きだったんだっけ?」って、思い出し中なんですよ。だから、他の人ってどうなんだろう?って興味があって。

菜央さん:私が大事にしていることは、自分が「好き・楽しい」って思ったことを選ぶということかな。直感力を大切にしてますね。私が小学生の頃って「女の子は女の子らしく」みたいなのがまだある時代だったし、中学校の頃も自分が好きになった男の子は絶対私のことを好きになってくれないなって笑。女の子っぽい子を好きになるんですよね。しゃべったら私の方が絶対面白いのに!笑。

―好きになって欲しいから女の子っぽくするんじゃなく、自分を曲げずに貫いていたんですね。

菜央さん:「確かに、見た目は負けたよ。その子の方が明らかにかわいいわ」とは思うんだけど、でもなんでみんなそっちなんだろう?とは思ってました。細い子がいいとか、ガーリーな格好をしている子がいいとか。ファッション業界も、すごく細身の読モが多かったし、そういう世の中の風潮だったので、憧れはありました。

でも、19歳でイギリスに留学してから意識が変わりましたね。ビッグサイズの人がピッタリしたレギンス履いて街中歩いてるのとか見て、カルチャーショックを受けて。ホストファミリーのママが「自分が食べたいと思ったら食べりゃいいんだよ」みたいなこと言ってて。いい大人が泥酔するまで飲んでるし。みんなめっちゃ楽しそうに生きてて、そういうのが人間らしくていいなと。そのときに結構吹っ切れたかな。やっぱり自分が好きなものを大事にした方がいいよなって思いました。今まで、いわゆる“女の子っぽさ”に違和感がある自分の方が変なのかなって思ってたけど、それって日本だけじゃんって。狭い世界にとらわれてたけど、やっぱり自分が好きなものを大事にしようって思えました。

―そこに行き着くまでは、「あれ?私って周りとちょっと違うのかな?」って感じてたんですね。

菜央さん:親は「あんたの好きなようにすればいいじゃん」って言ってくれてましたけど、他人とか異性とかからは変わった子って見られてたんじゃないかな。めっちゃカッコよくて好きだった2歳上の先輩も、カルチャー系の人だったのに好きになる女の人は清楚系だった笑。私は絶対選ばれない側でした。でも、私も頑固だから、自分を曲げてまで清楚系になろうとは思わなかったし。

―19歳でイギリスに留学して、そのまま海外で暮らしたいとは思わなかったんですか?菜央さんの性格的に、狭い日本より海外の方が合ってそうな気もするけど。

菜央さん:思わなかったですね。なんだかんだ日本が一番いいなって。イギリスの小中学生の不良はタチが悪いですよ。「タバコ買う金くれよ」ってカツアゲしてくるんですよ。なんでこいつらにカツアゲされなきゃいけないんだって笑。海外は日本の悪ふざけレベルじゃないんで。夜、怖くて歩けないし。

―本当にそういうことあるんですね……。そう考えると、治安という意味では日本がいいのかも。留学後は日本に戻って大学に?

菜央さん:留学自体が大学のプログラムだったので、帰国してそのまま東京の大学に通ってました。

何かを“表現”する人になりたかった

―東京に進学したいと思ったのは、何か理由が?

菜央さん:東京に出ようと思ったのは、ちょっとやってみたいことがあって。それを実現するには東京かなって思ったんですよ。“表現”というものにずっと興味があって、自分でも何か“表現”できるものをやってみたいなって。役者とかどうかなって思ったり。後先考えず、何もイメージしないまま動くので、とにかく東京行って、何か表現できる現場に携わりたいという思いだけで行動しました。

―本当、行動力がすごい! それを羨ましいって思う人はいっぱいいるような気がします。これやりたい、あれやりたいって思っても、思うだけで終わっちゃうことって多いから。実際に行動に移せるってすごいことだと思う。

菜央さん:でも、役者は無理だなって思いました笑。想像力がないんですよ、私。こうしたらこうなってこうなるんじゃないかっていうシミュレーションをあんまりしない。とりあえずやってみよう!やってみないと分かんないじゃん!って、動いちゃう。やってみて「これはちげぇ……」ってなったら……。

―じゃぁ、次行こう!って笑。

菜央さん:そうそう笑。さすがに今はそういうのは減りましたけど、10代の頃は本当そんな感じでした。

“新卒ブランド”に反抗

―表現の道は諦めて、そこからPRに?

菜央さん:ファッションが好きなので、アタッシュドプレスになりたかったんです。『情熱大陸』にも出演したことのある有名な人がいるんですけど、その人が立ち上げたアタッシュドプレスを育成する専門学校があって。そこに行ってみたいと思ったんですけど、自分には学費を払うだけの余力がないなと思ったので、他にもやりたいことはいろいろあったし、とりあえずまた海外行こう!って韓国に行きました。

―イギリス行って、やっぱり日本が一番いいなってなったのに!?笑。

菜央さん:大学卒業して韓国に行ったんですけど、3ヶ月で食事に飽きちゃって。私、見た目が韓国人ぽいってよく言われるんです。向こうでも現地の人に溶け込めてたみたいでめっちゃ生活しやすかったし楽しかったんですけど、お金も無くなったし、日本に帰らなきゃいけなくなって。もう本当に何も考えてないんですよね笑。とりあえず行ってみようって感じで。

―じゃあ、日本では就活はせず?

菜央さん:しなかったですね。私、本当に自分で自分のことこじれてるなって思うんですけど、“新卒ブランド”みたいな、大学在学中に就活して卒業してそのまま就職っていうレールを敷かれるのがすごく嫌だったんです。“こういうものだよ、世の中は”みたいなのが本当に嫌なんです。誰も就活のこと教えてくれなかったし。

―教えてくれなかったって笑。

菜央さん:気づいたらみんな就活してて。仲のいい友達とかも、いつの間に就活してんの!?って。

―自分も就活しようとは思わなかったんですか?

菜央さん:『WWD』は受けました。ファッションに関わる仕事がしたいけど、ファッション誌よりは、ファッションを評論するみたいな方に興味があったんですよね。パリコレとか見てても、なんでこういうデザインになったのかとか、社会性とかを考えるのが好きで。ファッション誌のようにモデルさんが服を着て写真を撮ってというものよりも、文章で伝えるようなことをしてみたかったんです。

信念や芯を感じられる人が好き

―菜央さんのお話を聞いていると、流行りだから、売れるから、とかよりも、ブランドとしてのメッセージが明確にあるところが好きなんだろうなって感じます。

菜央さん:そうそう。このデザイナーはこういう考えでデザインしています、とか。シンプルなデザインだけど、そこにはこういう理由があります、とか。アートもそうですよね。自分なりのメッセージを何かを通して表現している人に昔から憧れがあります。だから、単純に服が好きというよりは、その人の着ているスタイリングが好き、みたいな。

―なんでそのスタイリングに行き着いたのか?とか、そういう裏側の思いに惹かれるってこと?

菜央さん:そう。「私はこういうのが好きです」って表現している部分を見るのが好きです。その人の信念とか芯を感じる。

―周りに流されない、自分なりの個性を持っている人が好きなんですね。

菜央さん:自分では特に深く考えてなかったけど、仲良くなる人は、そういう人が多いかも。知り合いの旦那さんに「私の周り、変わった人が寄ってくるんですよね」って話したら、「そりゃ、あんたが宇宙人だからや」って言われて笑。私はいたって真面目な人間だと思ってるんだけどって言ったら「ちゃうちゃう、お前も宇宙人やねん」って笑。めっちゃ衝撃だった! 私、自分のこと宇宙人だなんて思ったことなかったから。

―いや~、その人が言ってることは当たってると思います笑。自分に似た人が集まってくるっていうね。

菜央さん:自分のことって分からないものですね……。


後編に続く。

文/遠藤真耶
写真/倉田若菜

草野 菜央(くさの なお)

福島県いわき市生まれ。フリーランスのPRプランナーとして活動しながら、ライフスタイルショップ「Magic Products」やフリーマガジン「SPOT(s)」など多岐にわたるジャンルで活動する。

特筆するなにかがあるわけではないが、とにかく東北が大好き。じっとしていられない性格なのに、インドア派。

 

写真:倉田若菜 Instagram @nanaaa_photo